「てめぇざけんなキメラ!リーダーがいないからって好き勝手しやがって貴様ぁぁぁ」
いきなり喧嘩勃発。
誰この人、とシルンは目をぱちくりさせた。
男の子…うん、男の子。
彼が怒鳴っている方向を見ると、やっぱり男の子がいた。
しかしこちらは男の子というよりは少年といった風貌で、いたずらな笑顔を浮かべていた。
「んだよサブ、怒んなって。リーダーみたいに心の広い奴になれよぉ」
シルンの後方からゴホン、と咳払いが聞こえた。
「サブ、キメラ。また喧嘩か…全く仲が良いことだな」
その瞬間、ぐわあん、と二人の体がこちらを向いた。
「リーダー!」
叫んでこちらに二人が突進してくる。
シルンは軽く悲鳴をあげかけたが、不意に立ちはだかったワドに守られる格好になった。
「ひっく、僕会いたかったよリーダー!」
「うっ、俺もっ、会いたかった…っ」
「はしゃぐな…」
ワドは抱きつき号泣し始めた二人を軽くいなしてひっぺがした。
「だってリーダー、キメラが僕の写真取ったんです!」
「いいだろっ!?サブの方がいっぱい持ってるんだし羨ましかったんだ!」
「そんな乱暴な!」
「…何の写真だ」
「リーダーの!」
二人でぎゃぁぎゃぁ言い合いつつ、サブが言った。
「酷いでしょ?それにリーダーのコート、半分にしよって言ったのに55%持ってったし!」
「お前だってリーダーの洗濯担当だからいいだろ!」
「お前はお風呂掃除担当じゃんか!しかも毎日!」
洗濯3日に一回なんだよ、とサブが言う。
「いいじゃねーか!リーダーが身に付けてた物にさわれるなんて!」
「そっちはお風呂の水があるじゃんか!瓶に入れてあるの知ってるんだからね!」
「服の毛玉とかとってあるじゃねーか!」
「…」
「だいたいっ!キメラ僕より背が高い! リーダーの呼吸に近いところの空気が吸える!」
「お前コンパクトだからってしょっちゅう抱っこされて鞄に入れられるくせに!」
「…おい、お客様だって言ってるのが聞こえないのか。そうかそれならこっちにも考えがあるからな」
呟くとワドは優しくキメラを吹っ飛ばした。
「ああっ!ずるい!リーダー僕も!」
「…遊んでるんじゃないんだぞ」
「じゃあ踏んで!」
サブはよりいっそう瞳を輝かせ、ワドを見上げた。
「…」
コツン、と脳天を拳で叩いてやるとその手に魚の如く食らいつき、離そうとしないサブ。
「離れろ。お客様をご案内してこい」
「だって最近リーダーちっとも来てくれなかったじゃないですか~僕すっごくリーダー不足ー」
「…」
ワドは軽く振り落とすと、キメラ、と呼びかける。
「船長以外はここを知らない。案内してやれキメラ。サブ、お前はそこの黒い髪の女子は新しい国民だ。手続きを施せ」
「はっ!」
「えーまじぃー」
キメラは嫌そうだったが、サブは礼儀正しく一礼し、承諾する。
「リーダーは?」
「さきに仕事だろうな…おい、サブ、キメラ怒るな」
後で合流するからとヒラヒラ手を振って、ワドは忽然と消える。
「それではご案内します、皆さん」
「俺は適当にこの辺うろついてるなー!」
テルは、そういって走り去った。


