「どお、ヒカリは此処気に入った?」
うん、とヒカリが頷くとシルンは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、ここに住むの、ヒカリ?」
「それも、いいよね」
でもせっかく仲良くなれたのに、とヒカリは残念そうに言った。
そりゃそうだけどさ、とシルンがそういって肩をすくめる。
「ヒカリには無理だと思うよ、うちの船はなんて言うかさ…」
「力不足?」
「ううん、それはまあそうだけどさ、ヒカリって別に使おうと思えば使えるよ?」
使うって、とヒカリが苦笑する。
「ううー、あれだよ、あれ。暗黒の塊っていうか、そういうとこあるんだよね」
「え?」
「あは、みんな黒歴史っていうか、そういうのがあるんだ」
副船長は見りゃ分かるだろうけどさ。
あんなに明るい船長も、ウィングも。
優しいキースやはらぐろーいキングにだって、触れられたくない傷があるの。
もちろん、私もね。
「そういうの、一個でも持ってるとさ、トラウマみたいな、常人って言ったらどうかと思うけど理解出来ないものがあるの」
そういう人は絶対、そうじゃない人には分からない何かがあるの。
地獄を一度でも見た人は、見てない頃には戻れない。
「ヒカリはそういうのと無縁でしょ?」
悪いことじゃないよ。
きっといつか地獄を見る日が来るかもしれないけど、来ない方がいいんだって。
そんな日。
そう、ヒカリ。
船長や、副船長や。
私も全部は知らないその闇に、きっとヒカリは飲み込まれる。
いつか“最強”と、そう呼ばれた二人の暗い影はきっとヒカリには重すぎて。
いとも簡単に飲み込まれてしまう。
お願いヒカリ。
奴隷がいけないことだって言えたあの時のヒカリのままで生きてね。
私も寂しいけど、一緒にいたいと言えないくらいには私は大人なつもりだから。
そんなこと、言わないけど。
「…うん」
「えへへ、こんな偉そうにお説教したこと言わないでね、ヒカリ。ワドに怒られちゃうから」
「え、何で?」
「んーと、ちょっとはヒカリの気持ちも考えろー、このガキーって?」
「言わないと思うよ、絶対」
「まあ、お前もっとわがまま言っていいぞって甘やかされちゃうかな♪」
わがままはワドのキスが欲しいってだけだけどねーっ♪
「ねえヒカリ、お仕置きだぞ、とか言われてもしかしてあんなことやこんなことされちゃったりするかな!?」
「…それもないと思う」
乙女回路全開で突っ走るシルンを引き留めながらヒカリはクスッと笑った。
「ワドさんすっごくクールビューティーだもん」
「あーあ、せめてツンデレとかにならないかな~」
「…うーんと、難しいと思うよ」
それはともかく、とシルンはニッと笑ってヒカリに手を振った。
「じゃあ、ここで待ってて、ヒカリ!」
「分かった!」
シルンは笑顔で手を振って、ヒカリと別れて店に入った…


