「酷い、そんな…!」
「それを酷いと思うのはお前が人間だからだ、ヒカリ」
そういってワドはそうだな、と一瞬考えてから首を傾げた。
「お前は、ペットを飼ったことはあるか」
「え?」
「ペットだ。犬でも猫でも鳥でも蛇でもペガサスでもユニコーンでも買ったことはあるか」
「…犬はいたけど…」
ペガサスやユニコーンを飼ったことがある人はいるのだろうか、とヒカリは疑問に思った。
まず存在するのかな…
「それと同じだ、ペットが反旗を翻して人間を襲うなんてことないだろう。奴隷も同じだ、それが当然だと思っている」
「でも…」
「お前が神になれないのと同じように奴隷も人にはなりえない。だから地球は面白い。人間以外の生命体は、労働用の命を作り出している」
「でも」
天界ではそんなことはないんでしょ…?
ヒカリはそう言いかけてさえぎられた。
「その代わり、天界では工業と呼べるものが全くと言っていいほど存在しない」
このあたりについてはキースが詳しいだろう、とワドは言って、キースを促した。
「…あのねヒカリちゃん、僕のこの手足、天界では治せないんだよ。人体実験なんてできないから医療も発達しない、当然不治の病が横行すれば隔離もしないから一瞬で村が一つ滅びる。労働力もないから生きていくためにはみんな働かなくちゃいけない。
そういうところで育ったら別だけど、たぶんヒカリちゃんには三日と持たないんじゃないかな。
実際、魔界の技術はおっそろしいしね。その分安全で、確実なんだよ」
「お前の世界は半々ってところじゃないのか。ちょうど中間。でも発達してるってことは、人間じゃなくてほかの生物にやってるんだろう」
不思議な奴だな、とワドが続けた。
「犬ならかわいがるのに、なぜかその犬を実験道具にする。しかも人のためにだ。変だと思わないのか。人間は60億人以上いるんだろう…」
「でも僕はそうは思わない、それに、ワドは僕らの仲間でしょ。ワドは違うんだからね、いい?」
「…俺はそう思わない。奴隷制度は廃止するべきだとは思うが、俺をかわいがる理由は全宇宙の星を爆破しても見つからない」
もう、とキースが膨れた。
ホントにワドったら、馬鹿なんだから。
「ほらほら、魔法科のお時間だぞ!全員席につけ!!」
「はいはい」
いこ、ヒカリちゃん。
キースが差し出した手を、ヒカリは握った。


