人に見られたらまずいから。
彼はそう言って私を家に入らせた。
玄関に入ると、さっき置いたばかりの書きおき。
彼の目にそれが触れた所で「ごめんなさい」と言う。
「…いや。よく知りもしない男の家から出て行こうとするのは当たり前だし」
そう言ってから、私を振り返った。
「言いたくないこといっぱいあるよな」
私は自分の肩が強張るのが分かった。
「何も聞くつもりもないし誰にも言うつもりもないけど、あんた、どっちにしろ警察行きだよ」
私は黙っていた。その通りだった。
それも覚悟の上だ。
でもこの人には、ある程度見透かされているのか。

