だって、君が。




「み…なみくん、手」

「分かってるけど、」


見上げると彼は私から目を反らす。


「…分かってるけど」


ともう一度呟く。





何が分かっているのか、彼が何を言いたいのか分からず私は押し黙る。

ただ掴まれた左手首が熱かった。

早く、離してほしかった。



「引きとめて、ごめん」



彼がそう言うのとエレベーターが15階に着くのとが同時だった。

ドアが開く。

動こうとしない私を彼は少々強引にエレベーターから出した。