だって、君が。




ベッドを整え、さっき手渡された紙切れの裏に書きおきを残す。


『本当にごめんなさい。ありがとう。
 中山』


荷物を抱え玄関を出る前に、部屋を一度振り返る。



ここまでしてくれた彼に、何の奉仕もせず黙って出て行くことに罪悪感を覚えないわけではなかった。


ただ、あまりにも時間がなさすぎたんだ。

あれから2日。

…もし通報されていたとしたら。

もうこのあたりにまで警察の目が張られていてもおかしくなかった。



その前になんとしてでも、この街を出なくちゃいけない。



「ばいばい」



小さく呟くと、胸に痛むものを振り払うように玄関のドアを閉めた。