『そんなつもりねえよ!勘弁してくれ!』

卓也が冷静に言った。その気迫に思わず不良は手を離す。

『チッ…もういいわ』

不良達はそそくさと退散していった。まるで、何かに追われるような不安感を胸に抱いて。不良達の姿が見えなくなるのを確認して卓也は女子高生の肩から腕を離す。

『人を助けて、人に助けられてちゃ世話ねえな』

卓也は冷たく言い放った。そしてその場を後にしようとした。

『そっちじゃないですよ。ボロンニャ!』

『は?』

『それですよ!』

女子高生は卓也のスマホを指差した。その画面にはパン屋、人気ランキング第1位ボロンニャが表示されていた。

『いや、これは…』

『こっちです。』

女子高生は卓也の腕を掴んでボロンニャに誘導した。着くまでの間も、何が人気だ、おすすめは何だと色々と話が止まらない。そんな会話の中で同学年の伊集院久未(イジュウインクミ)だという事までは知った。その後、ボロンニャで買ったパンをなぜか一緒にお昼に食べようという約束をして別れた。おすすめの公園がこの近くにどうとかこうとか。どうでも良いと思い適当に返事を返した。