『知らねえよ、どっか行けや!』

不良達が近づいてくる卓也に言った。卓也はお構いなしに近づく。その距離は1メートルを切った。もう手を伸ばせば届く距離だ。

『そっちの彼女は知らない?』

卓也が右目をウインクした。右目の傷はしっかりと跡形になっていた。

『あ!知ってます!私、知ってます。』

女子高生は大きく頷いた。

『良かった。案内してくれるかな?』

『はい。』

卓也は女子高生の腕を掴んでいる不良達の腕を優しく振りほどいた。そして女子高生の肩を抱いてその場を後にしようとした。

『ちょっと待てよ!』

不良達が卓也の肩を掴む。卓也は条件反射でチョーパンを食らわしそうになるが、母親の言葉が脳裏に浮かぶ。

(一度でも停学になったら辞めてもらうからね)

卓也にブレーキが掛かる。さっきまで卓也の空気感に戸惑っていた不良達も徐々に調子に乗ってきた。卓也の髪を掴んでイキリ出した!

『やんのか?ああん?』