朝と昼と夜。〜朝〜

卓也は全てを話した。自分の過去も、拓郎の事も、ケジメを取りに行くことも。久美は黙って卓也の話を聞き続けた。辺りはすっかりと暗くなっていた。今度は、久美が話し始める。弟は凄く優しい子で、特におばあちゃん子で、あの震災以来、変わってしまったと…。
今では家族との間に溝が出来てしまい、連絡すら取れない状況らしい。久美は、卓也にやめて欲しいと頼んだ。弟を守りたい訳じゃ無かった。3年前のあの震災以来、本当に久須は変わったのだ。あの優しい久須はもういない。それは久須が中1の時だった。荒れ狂う久須と父親が初めてぶつかったのだ。激しい殴り合いの中で、父親が、おばあちゃんの事を忘れるように訴えかけた時だった。久須の中で何かが弾けた。父親の首筋に噛み付いたのだ。その目は狂気以外の何者でも無かった。今でも父親の首筋には痛々しい傷口が残っている。そんな久須と卓也がぶつかる。久美には耐えられない状況だった。

『心配するな!俺を信じろ!』

『でも…』

久美の言葉を遮るように卓也は口づけを交わした。静かに目を閉じる久美の目から涙が流れる。卓也は優しく抱きしめた。