卓也は池ノ内公園で久美を待つ。真っ赤な夕日が街を照らす。道路を挟んで信号に捕まる久美の姿を見つけた。久美は満面の笑みを浮かべて手を振った。卓也もそれに応える。

『お待たせ。』

『おう。』

卓也は頭を掻きながらソワソワと落ち着かない。それを察知した久美が優しく微笑む。

『どうしたの?』

『おん。その…』

『何?』

卓也は意を決して久美に問いかけた。

『弟って、伊集院…久須?』

違ってくれ!卓也は心の中で叫んだ。額に汗が流れる。久美の目が見れなかった。

恐る恐る久美の顔に目を向けた。その驚きの表情が何を意味するのか卓也はすぐに理解した。

『なんで知ってるの?』

久美の問いに返す言葉が見つからない。卓也は黙って空を見上げた。夕日に照らされた空は炎のように赤かった。