その日の放課後、卓也はある場所に向かう。その表情は真剣そのものだった。人混みを掻き分け目的の人物へと辿り着く。

『おい、ちょっとツラかせ!』

『待ってたよ。卓也くん。』

甘ったるい声に鼻に着く香水の香り。加奈子が全てを分かっていたかのように待っていた。

場所を変え、卓也は加奈子と2人になった。

『伊集院に関わるな!』

卓也は単刀直入に久美の事を言った。卓也は全てを知っていた。久美が加奈子に嫌がらせを受けている事も、それに便乗して女子たちが久美を仲間外れにしている事も。所詮、世の中はそう言うものだと卓也は知っていた。正しい者が勝つなど夢物語だ。実際に加奈子がヒロインになり、久美が悪者になっている。逆に言えば久美の方が妬まれやすい良い女という事だ。

『なんの事?』

トボける加奈子。

『ふざけるな。』

卓也の真剣な眼差しに加奈子は一瞬怯んだ。

そして、信じられない提案を持ちかける。