朝と昼と夜。〜朝〜

昼休み、卓也が屋上で空を眺めていると目の前が真っ暗になった。それが何かをすぐに理解して飛び起きる。

『おせーよ。』

『ごめん。カフェオレ買ってきた!』

久美は得意げな表情を浮かべる。本当に屈託のない子供の笑顔だ。いつの間にか、その笑顔に心地よさを覚えている自分がいた。2人はフェンスに肘をつくようにもたれながらパンを頬張る。もう言葉はいらず、アイコンタクトで頷き合う。

『ここから池ノ内の公園って見えるんだな。』

卓也が顎でクイっと方角を示す。

『本当だね。こんな風に町並みを見たのって初めてかも。』

久美は微かに悲しげな表情を浮かべた。その空気に気づくが卓也は敢えて口には出さなかった。何か軽はずみに聞くような事ではない気がしたからだ。

『あー!卓也こんな所にいたんだー!』

屋上のドアから鼻を抜けるような甘ったれた声が飛んできた。と、同時に加奈子の香水が屋上中に充満する。おそらく目をつぶっていても加奈子がどこにいるのか分かるだろう。

『こんにちは〜。』

加奈子が久美に挨拶をする。

『あ、こんにちは。』

久美も挨拶を返した。誰に対しても変わらね笑顔だった。加奈子の作られた笑顔とは全然違った。