『おはよ〜』

朝から甘ったるい声で話し掛けてくる。加奈子だ。席に着くや否や加奈子の率いるお嬢様グループが卓也の周りを取り囲んだ。

『本当にお似合いだよ、加奈子〜!』

『まさしく美男美女だね。』

加奈子の取り巻きが口々に持ち上げる。加奈子はまんざらでもない顔で謙遜してみせた。卓也は相変わらず全く興味を示さない。それどころか、なぜこの女が付きまとうのか理解していなかった。もちろん昨日の事もすでに記憶にない。

『なあ?』

卓也が口を開く。

『なになに?』

加奈子は目をパチクリさせおどけて見せる。

『ウザいんだけど。』

『え?』

教室が静まり返る。加奈子の取り巻き達も言葉を失った。加奈子の顔が歪む。

『ど、どうしたの?私たち付き合ってるじゃん。』

『は?知らねえよ。』

卓也の表情が険しく変わる。