『うっめー』

卓也は飛び跳ねる勢いで足をバタバタとさせた。散歩をしてる人達の視線が集まる。

『卓也くん、卓也くん、みんな見てるよ』

久美が小声で言った。卓也は顔を赤くしてベンチに腰を下ろす。またしても、あの笑顔で久美が笑った。


『ほら!』

卓也が財布から200円を取り出して久美に渡す。

『おつり、おつり…と』

『釣りなんて要らねえよ!』

『ダメ。嫌なんだちゃんとしないと。』

そう言って久美は財布を取り出して小銭入れのポケットを開いて固まる。

『あ!そうだった…』

久美はパンを小銭でちょうど払えて、やった〜今日はツイてる!とハシャいだ数分前の自分を思い出した。

『卓也くん、ちょっと待ってて、崩してくるから。』

『良いって!』

『ダメなの。』

『わかった。じゃあ200円返せ!』

『え?』

久美は良く分からないまま卓也の言う通りにした。

『明日、買って返せば良いだろ?』

『え?うん。ありがとう。』

久美は満面の笑みを浮かべた。卓也もフッと笑う。

『ほんとに、調子が狂う女だぜ…』

そんな2人の姿を影から見つめる人影があった…