結衣もまた、橋本を好いていた。目で追っていくうちに橋本の優しさが見えるのだった。しかし、あの有名な橋本に思いを伝えることなんておこがましいと思っていたし、そもそも橋本は自分のことを知っているなんて思ってもいなかった。


呆然と立ち尽くす結衣に橋本は苦笑しながら声をかける。

「あ、朝日奈さん…ずっと見てたとか気持ち悪いよな…」

すると、今度は焦ったように声をかけてきた。

「え、そんな泣くほど気持ち悪かった…?」

(わたし、泣いてるの…?)

結衣が頬に手を当てれば確かに涙がつたっている。

「ち、ちがうの…」

「え…?」

「わたし、わたしも橋本くんのことがすきなの…でも夢かと思って、橋本くんはわたしのことなんか、知らないって…きゃっ」

「よかった…絶対フられるって思ってたから」

橋本は結衣が話してるのを遮るように抱きしめてきた。優しく、そして包み込むように。