夏祭り以来、結衣と連絡が取れなくなっていた。謝りたくて何度も朝日奈家を訪ねたが、結衣の部屋は常にカーテンが閉まっていて、会うタイミングがなかったのである。たとえ今会えなくとも学校が始まればまた会える、そう気楽に考えていた。


あの日、結衣との夏祭りをドタキャンしたのには訳があった。そもそも学校でも好きで七瀬といるわけではない。

簡単に言えば、七瀬に脅されていたのだ。


七瀬には結衣と付き合う前から何度も告白され、断ってきた。だが、プライドの高い七瀬はその度にハグやキスをせがんだ。告白を断られたという事実を消すために。
しかし、真面目で初心(うぶ)な橋本はそんなことを簡単にする男ではない。そんな橋本がついに彼女を作った。七瀬は初めて、敗北を味わった。

どうにかして橋本を手に入れたい七瀬は、とにかく二人の邪魔をした。それでも何の効果もなかったことに悔しくなり、最終的には拒めば結衣を襲うと言い、橋本を脅したのだった。

そして夏祭り当日。絶対橋本と結衣が出かけるだろうと思った七瀬は橋本の家で待ち伏せた。そして橋本を夏祭りに誘い、脅した。手をつないでたのは、七瀬がコンタクトを飛ばしてしまいきちんと歩けなかったため、仕方なくしたことだった。