「伊織⁇……あぁ、水原伊織のことか⁇
……悪いけど、今 保留にしてる。」
「なんで⁉︎伊織に不足なんてないじゃん!」
思わず大声で反論してしまった。
でも、そうか。
返事を後回しにされているから、伊織も私たちに何も言えなかったんだ。
ただ単に 伊織が恥ずかしがってるだけなんだと思ってたよ、私は。
「……なんか、陽奈を差し置いて 俺だけが幸せになっていいのか分からない。
それに、父さんも俺たちを見捨ててたわけじゃなかったんだ。
父さんにも理由があって、だからこそ 家に帰れる状況じゃなかった、って。
陽奈の告別式は無理を言って、白い目で見られながらも 来た、って言ってた。
俺も父さんも暫く家に帰ってなかったから 話す機会もなくて つい最近知ったんだけどな。」



