無視する、もしくはあの女性と同じように不快ですよと表現するに留めて立ち去る・・・・・うーん、でも私、まだ今晩読む本、選んでないしな。このところハマっていた時代小説を読み終わってしまって、そろそろ現代物の新しい作家を発掘したい頃だった。

 ちょっとの間そうやって悩んで、とりあえず私は彼を無視することにした。

 さっき目に付いた平積みの新刊をもう一度見る。新しい推理小説?脱出ものみたいな・・・ふーん、後ろ書きを読みながら買うかどうかで悩んでいると、急に肩のところで声が聞こえた。

「それはつまんなかったよ。それに、後味が悪かった」

「うひゃっ!」

 驚いた私はつい声を上げてしまってパッと振り返る。

 そこにはさっきから私を見てくすくす笑いをしていた男性がいた。所謂赤毛、その金髪には鈍い光があり、細い眉に瞳はグレー。白い肌。高い背。・・・ハーフの人?それともそれっぽい日本人?

 とにかく、やたらと目立つ外見をした男性だった。

 ざっと姿を見てそんなことを考えて、私は後ろに下がる。

 この人、さっきなんて言った?

「私──────に、用ですか?」

「それ」

 どれ?私が首を傾げると、彼はすいっと私が持っている本を指差す。

「それのことだよ。買うのはお勧めしないっていってんの。面白くないから。読みたいなら図書館にはいるの待てば?」

 ムカッときた。