雪がどんどん降ってきていた。話している間にも二人の頭にも肩にも積もっていく。冷たくて、小さな氷の結晶が。
睨むのをやめてじっと見ていたら、じゃあね、と男が言った。
だからあたしはその背中に声をかけたのだ。
「ねえ、ちょっと、マフラー泥棒さん!」
男がちょっと驚いた顔で振り返る。
「・・・次はあたしの番でしょ。ちゃんと最後まで付き合ってもらうから」
ぽかんとしている男の手をぐいぐいと引っ張って適当に歩き、発見したラブホに連れ込んだ。その部屋であたしはさっさと浴槽にお湯をためていく。そしてパッパと体と頭を洗って、雪で濡れてしまった体を温めた。
無理やり一緒に入らされたのにお触りを禁止された男は、困惑したままの顔でとりあえずと同じように頭と体を洗っていた。
シャボンを浮かべたバスタブの中で、あたしはようやくあはははと笑う。
「狐につままれたって顔、してるよ」
シャワーを止めて両手で髪を撫で付けてから、男が苦笑した。
「・・・いきなりだったし、予想外の展開でね」
失礼、そういって同じ浴槽に入り、湯気の向こう側からあたしを見た。
「それで、これからどういうことになるんだ?」
あたしは指に髪をくるくると巻きつけては離す、という動作を繰り返しながら、男を見ていた。空いている右手を湯船の上に出して、にっこりと微笑む。



