「全くお二人とも、何て顔してるんですか。まるで中学生ですよ!」

 ・・・やっぱりそう見えるのか。私は自分でもそんな感じだと思っていたことを思い出して、つい苦笑してしまった。すると隣からも失笑が聞こえる。彼も、自分でおかしいと思ったらしい。

「だってマスターが先に言ってしまうから。・・・もう」

 そう言って、隣の彼は深呼吸をした。それから様子を窺っている私の方へ体を向ける。それが素早くて、私は一瞬で緊張してしまった。

 思わず目を見開いて彼を見る。銀色の薄いフレームの向こう側、目をこちらに向けて、顔を赤くしたままで彼が言った。

「気になってしまってて。それで、つい姿を探してました。そうしたらマスターにバレてからかわれたんです。すみません、いきなりこんなこと言って」

 勿論私はビックリした。目の前の気になる人から、私の気持ちそのままを言われてしまったからだった。

「あの・・・」

 言葉が続かなかった。だけど、心の中では喋っていたのだ。ベラベラと。私もあなたが気になっていたんです、姿を探して嬉しかったり残念がったりしてました、でも今日会えて───────

 心の中でいくら喋っても、実際には無言のままで固まる私。彼は顔を更に赤くして視線を外す。

 あ、あ、どうしよう。彼が困ってる─────

 あははは、とまた、前からマスターの軽い笑い声がした。

「気を利かせて消えたいところですけど、ここが私の定位置なんですみませんね。でもこの方も同じはずですよ」

「え?」

 顔を赤くしたままで彼がマスターを見る。私も同じく赤面したままでカウンターに向き直った。