柔らかい君の体を抱きしめる。僕はすっかり疲れていたし、君のむき出しの腕や頬から感じる体温が、とっても嬉しい暖かさだったんだ。

 君を探して空を飛んで、広大な台地を横切ってきた。その旅は、誰のものでもない、僕だけの宝物になったんだよ。

 風と砂と水と笑う君を見つけた。

 曇り空だったけど、温かくて美しかった。

 贅沢な一瞬、そのようなもの。


 ・・・全部全部、ここに来るまでの過程も全部、僕の、宝物だ。


 パムッカレの高台の上、僕は君を抱きしめながら泣いてしまった。まるで子供みたいに。



『ねえ、ずっと、ずーっと真っ直ぐな一本道を見たこと、ある?』


『人間って、形がハッキリしたものが目の前にないと不安なのよね。だからわざわざ目を細めて必死に遠くのものの形を見極めようとしちゃうのよ。でもそれって、ちょっとバカみたいよね』


『だって大事なものって案外、目の前にあるのにね』


『目に見えないだけで、目の前にね』



 君は今でもそう言って、僕の前で笑っている。






・「君を探して」終わり。