僕はぽかんとしていた。

 今、君は僕を好きだったって言った?何だか耳の中にまで砂風が入り込んでしまったみたいで、よく聞こえなかったよ、そう思っていた。

 君はやっぱりニコニコ笑って僕を振り返る。

「だから、あなたに来て欲しかったの。それがまさか叶うだなんて思ってなかったわ!」

 そして僕を誘ったんだ。ほら、行きましょう。あれを見なくちゃって。

 手を引いて、一緒に走った。

 僕はリュックが落ちないように何とか手で押さえて、駆けてゆく君の後ろから叫んだよね。

「あのメモって―――――――」

 ちらっと僕を振り返って、太陽に目を細めた君がいう。

 だから、あたしのことだったんだよ、って。好きになった人に振り向いて貰えない、退屈で死にそうな女の子!天国に―――――――憧れたの。

「だからここに・・・ほら!」

 急にパッと視界が開けて、そこは白い世界。

 目の前にはパムッカレの素晴らしい景色。

 白い岩棚、そこに滔々と流れる豊富な水、水底は明るいブルーに光って、はるか下の街へと注ぎ込んでいるように見える。

 天の、水甕みたいだった。