私は興奮した。そしてうんうんと力強く頷く。一度は諦めた御礼を言いたい熱が再び湧き上がってきたのを感じた。

 まだメイクは半分なのに、早速私はメイクボックスを脇へ押しやってノートパソコンをバタバタと開ける。

 緊張して汗ばむ手をぶらぶら振って落ち着かせ、それからキーボードを叩いて彼の名前を入れた。

 出てきたのは色んな情報の渦。

 出演作品、その評価、ミュージカルの案内、それに関する個人ブログ等々。その中で、本人が発信しているフェイスブックを発見した。

「おおおお~っ!!」

 つながれる!そう思ってまたもや興奮し、奇声を上げる私を、前から姉が落ち着きなさい~!って叫ぶ。

 これが落ち着いてられますか!だって、彼に直接コメントできるじゃないですかーっ!!

 私は弾む気持ちでキーボードを打った。

 あの日のこと、本屋で他人にぶつかった私達を見て笑い、その後で本を薦められたこと。その本は私の中で大切なものになり、今や家族中で愛読しているってことも。雑誌を見て、名前を知ったこと、一言お礼が言いたくて、あれから本屋をウロウロしたこと。

 長くなってしまって一度じゃ読み辛かった。だから2度に分けて書き、送信する。

 ・・・ああ、ちゃんと届くかな。私だって判ってくれるかな。判るは判るにしても、実際のところ迷惑に感じられちゃったらどうしよう。送ってしまった後でそんな心配が湧き出てきて、私はガックリと肩を落とす。

 そんな私を見て姉は笑った。

「送っちゃったんだから、もう仕方ないでしょ。いいじゃないの、後は野となれ山となれよ~」

「そ、そうよね」

「とりあえず、その片目だけメイク済みのビフォーアフターみたいな不気味な顔を何とかしなさい。約束に遅れないの?」

「あっ!!」