「…ただいま」

「あんたッ!彼氏と別れたんだったって!?なんで別れちゃったのよ!?あんたの年ならもう結婚しててもおかしくないのよ!?ちょっと聞いてるの!?」

「春、仕事で疲れて帰ってきたんだからそんな声で騒ぐなよ」

「ごめん、話は明日言うから寝かせて…」

母は私が帰ってくるなり居間から走って甲高い声でグサグサと私の傷を抉った。
そんな母の後ろに付いてきた父はなだめるように母を居間に連れて行ったその間に父は指で二階に行けと合図を出され自室に物を入れ静かに戸を閉めると何故か涙が零れた。
ポツンと一人の自室はすごく孤独で悲しく寂しく感じた。
今までは彼との思い出が詰まった部屋で2人で楽しく時を過ごしていたのに。
一緒に夕飯を食べ、同じソファで楽しく趣味の話やらをしていたはずだった。

「なんで…」

ただ、その一言を絞るように言うことしか出来ず壁からズルズル崩れるようにうずくまりすっぽりと抜け落ちてしまった穴はとても大きく感じた。
ずっと泣きながらうずくまっているといつの間にか寝ていたらしく重い頭を抑えて窓を見ると朝日が少しずつ上って朝方になっていた。

「…ひどい顔」

置いてあった鏡を見てみるとメイクは落ち泣いたせいかお化けのようになっていた自分の顔にも嫌気がさしシャワーを浴びに下に降りると母と鉢合わせた。

「あんた、起きたの!それにしても、ひっどい顔ねぇ〜シャワー浴びてらっしゃい!ご飯作ってあるから!」

何やら母は私のことをすこし心配してるように感じた。
私はシャワーを浴びている間も考えたのは元彼のことばかりでどうして別れたのか未だに分からずモヤモヤとしたことだけが心に残っていた。

「今日は早く行こう…」

そう思い身支度を終え家から出て少し歩いていると突然赤い青色のスポーツカーが止まった。
いかにも高級車のようにキラキラと輝く車に見惚れていると高身長のスーツを来た男の人が降りてきた。
男は私に近付き黒のサングラスを外すと綺麗な青色の目と目が合った。

「すみません、ここらへんにこの会社ってありませんか?」

「え、あ…この会社ならこの会社の隣のビルですね」

「そうでしたか!どうもありがとうございます…綺麗なお嬢さん」

「…え?」

「また、今度会う機会があったら会えたらいいですね」

スーツの男はスラッとした体型で私と二十センチぐらい違うように思えた。シルバーのような髪色は太陽の光で輝きウルフカットのようになっていた。
ピシッと決まったスーツには皺一つ見当たらなかった。
サングラスをまたかけるとスポーツカーに乗り込み隣のビルに行った。
この男の最後の言葉に疑問をいだいたがそんなことよりもあの人は