「お前には、俺じゃないやつと幸せになってほしいんだ」

そんな一言を彼に言われ五年もの彼との時間に終止符が打たれた。
彼とは、会社で知り合い趣味や暇な時の過ごし方や何やらまで合うほど相性はよかった。デートを重ね一年経ってやっと付き合い恋人同士になった。
三年半たった頃には同棲を初めており結婚の約束をしていた。五年の歳月が経ちプロポーズもされ結婚の式場を二人で決めていた幸せ絶頂のある日の事だった。
突然彼が立ち上がり私に頭を下げた。
一瞬何が起こったか分からず混乱していると彼からこの一言を言われた。
自然と涙は出なかった。

「で、別れたの?」

「…うん」

「それ、いつの話?」

「…一週間前」

「あんた、だからこの一週間元気なかったの?」

「…だって、いきなり過ぎだし…こんなあっさり別れるなんて思わなかった…」

「浮気されたの?」

「…多分違う…」

「まぁ、とにかくそんなに落ち込まないで今日はパァっと飲みましょ!」

私、大珠菊。三十歳。
五年付き合った元彼と別れ絶賛落ち込み中。
歳も歳なわけで五年も付き合えば結婚するのは当たり前だと思っていたのにも関わらず彼とは破局し今現在会社の休憩室で私の愚痴を淡々と聞いている友人の蓮花。
蓮花とは会社が同じで同期であり、美人で7年付き合ってる年上の彼氏もいる。私はそんな蓮花を少し羨ましく感じていた。
蓮花は元彼とも同期のため知っていると思っていたが元彼がまだ別れた事を誰にも言ってないみたいでよかったと少し安心した。
会社では部内恋愛はダメではないが別れた後、女上司にネチネチと言われると言う伝説がある。
私はそれに少し怯えていたから内心ホッとした。

「これから、荷物とか出さなきゃいけないんじゃないの?」

「うん、でも荷物そんなにないから今日中に出しちゃおうと思ってね」

「出しちゃおうって…菊、あんたどこに住むの?野宿すんの?」

「しないよ、実家に帰るの」

「あー、なるほどね。でも、親御さんにまた言われんじゃないの?…色々と」

蓮花は呆れてるのか心配してるのか頬杖を付きながら盛大な溜め息を吐いた。そして、蓮花の最後の言葉で私の気持ちは一気に落ち込んだ。

仕事終わり蓮花に話を聞いて貰っただけで私は少し落ち着きを取り戻した。
夜に蓮花と呑みに行く約束をしていたが彼氏からの5日ぶりのデートのお誘いがあったので行けないと言われた時は少し羨ましくも思った。
蓮花は、彼氏と10歳離れており親の紹介で知り合ったと7年前に言われた時は少しありえないと思ってしまった。
私自身、そんなに年の離れた彼氏と付き合ったことが無くむしろ年下と付き合う方が多かった。
この間、別れた元彼とは2歳違いで彼の方が年上だった。
そんなに、年なんか気にすることはないけれど流石にこの年で彼氏と別れたことはかなり致命的だった。