「………パートナー?」





「変わってるでしょう?

姉はそのことを知らずにn市まで行ったみたいで
パートナー同伴だと知ったときは
当日だったみたいでです」






「でも、講座は受けたんですよね?」





「ええ、悩んでいたら
声をかけて頂いた方がいるらしく………」





「いわゆる、ナンパですか………」







「そう、ですね」






麻里子は苦笑いを浮かべ、パエリヤをスプーンですくう





「その方が恋人になったんですか?」






「そうなんです、でもかれはn市在住だったみたいです
だから、小百合もまた、大学院卒業後に
n市で教師をしていました………」





「じゃあ、n市で3年間、教師をしていたんですか?」






「そうです」






「その、元彼の名前は?」






「それが………」




急に肩をすくめて、自信をなくした麻里子がそっと口にした






「わからないんです……
姉の小百合は、彼との出会いが運命的だったと言っただけで
多くは語りませんでした………
今、彼が何処でなにをしているかも
わかりません」







「運命的だった?」







「ええ、姉にしては珍しいことを言うなと思いました」






「講座のナンパが運命的だったんですか?」






「あっ、いやどうも実は、以前に会ったことがあったらしいんです」







「ほうほう」






「ほうほう?」








「あっ、いや気にしないで」







「まあそんなこんなで講座中に意気投合したみたいです」







「………講座中に意気投合するのは
難しくないですか?
教授の話を聞くんでしょう?」





「えっと………なんか、その講座内容が変わっていて………」






「というと?」







「チェスをしたらしいんですよ」








「チェス?クリスマスイブに?」






「そうです、変でしょう?」








「5年前のクリスマスイブにチェス…………」





「えっ、どうかしました?」





麻里子が相良をいぶかしむように
下から覗いた






「ああ、いえ、なんでもないです」






相良はおどけた表情でその場をやり過ごすと
パエリヤを口に運んだ


口にした海老が懐かしい味がした