朝日が昇りはじめ、あけぼのの空が広がっている
布団の中でうずくまる紫子がもぞもぞと動き出した
「……んん………れんちゃん?」
「おはよう、しこさん」
布団から紫子が顔を出すと
すでに起きていた練無と目が合った
「今………なんじ?」
「まだ、5時すぎだよ」
「……うわ、うち、めっちゃ早起きやん」
「しこさん、夜行性だからね」
「なんか………喉乾いた…………」
「はい、お水」
練無がワイングラスに注がれたミネラルウォーターを紫子に差し出した
「ん………、ありがと」
紫子はシーツで胸元を隠しながら
腰を起こし、グラスを受け取った
「今さら、隠すことないじゃん」
「………そういう問題ちゃうの」
「しこさん、僕に聞きたいことあるんだよね?」
「ああ、うん………………でも、後でな」
「しこさんから、アクションかけたくせに、随分と引っ張るね」
「今は…………仕事の話したくないんや」
「なんで?」
「なんでって………朝だから、頭働かんのかいな?
そんなん、今はプライベートだからやん」
「プライベートって…………
しこさんは情報が欲しくて、僕と寝たんだよね?」
そんなことを真顔で聞いてくる練無にイラついた紫子は
グラスの水を飲み干すと
ため息混じりに答えた
「はあ…………そんな訳ないやんか」
「えっ、違うの?」
「当たり前やん」
「じゃあ、なんで?」
「……………抱かれたかったんや、キミに」
「………………。」
「れんちゃん?」
練無は紫子の予想外の一言に顔を赤らめると慌てふためき、おもわず彼女に背を向けた
「どうしたん?」
「…………もう、止めてよ、そういうの」
「どうしたん?こっち向いて?」
「…………無自覚なの?はあ、無自覚なんだろうな………」
「えっ?」
そのとき、いきなり振り向いた練無は
紫子の背後に腕を回し、抱きしめた
紫子は突然の抱擁に、躰をビクリと震わせたが、
練無はかまわず彼女の首筋にキスをした
「……ん………ちょっと、なに………?」
「なんで、いきなりそんなに素直になるわけ?」
練無が再度、力を込めて紫子に抱きつく
「ん………れんちゃん、苦しい………」
「しこさん、お願いがあるんだ」
「なに?」
練無は紫子の耳もとで
ささやく
「僕と結婚を前提に付き合ってほしい」
「えっ………」
「返事はいつだって構わない
何年先でも、いいよ
しこさんの気持ちが固まるまで何年でも待つから」
「ちょいと待って、れんちゃん?
れんちゃんは冷めたんちゃうの?
うちら、別れたやん」
「まさか、僕は5年前からずっと
しこさんが好きだったよ」
「じゃあ、なんで別れようなんて…………」
「しこさん、無理してたでしょ?」
「えっ、そんなことないで
うちは………」
「しこさんは僕のこと親友として
好きだったんだよ…………僕とは違ってね」
「なっ、そんなことないって」
「でも、しこさんは僕に合わせてた………」
「………………。」
「しこさんの大学卒業は離れるいい機会だったからね、
いずれ僕たちは別れてたよ」

