練無の執拗な愛撫を受けた紫子は
寝息を立てて落ちてしまった
時刻は深夜3時
月明かりはベットの脇を照らしていた
眠れない練無はそっとベットを抜け出し、夕飯の残りの赤ワインを呑んだ
横向きにうずくまるように寝る彼女を見ながら
昔のことを思い出していた
3年前の冬、2年付き合った紫子に
別れを告げたのは
練無の方だった
たしか、あの時は練無の部屋で
2人で新しいパスタソースの研究をしていた時だ
しこさんはトマトソースにコンソメ入れすぎって怒ってたっけ………
もしかして、あの時、パスタを作ってたから
イタリアンが嫌いだと彼女は言ったのだろうか?
別に言うつもりなんてなかった………
別れたいなんて思っていなかった………
3年間、忘れることなんて出来なかった
たしかに、何度か女を買っては抱いた
別れたあとの女遊びは随分とひどかった
でも、彼女たちは、ただの性欲処理の相手で
また寝たいとは思わなかった
女と寝るたびに
隣の女が紫子でないことに喪失感をおぼえた
それならば、別れなければ良かったのだろうか?
いや、それは違う。
あの時、別れなくても
遅かれ早かれ、僕たちは別れていた
別れを切り出した時、紫子は何も言はず
こくりと頷いた
もし、あの時、彼女が泣いて嫌がったら
別れなかったのだろうか?
でも、僕はわかっていた
紫子は別れを素直に受け入れることを。
彼女が僕に向ける愛はあくまで親愛で
僕が彼女に向けるそれとは違っていた
自分を忘れるくらい、キミを愛していた

