練無の一言が
地獄に突き落とした




「………初めては、れんちゃんよ」



「話をそらさないで」



「うちもキミも3年間会わなかったんよ、お互い綺麗なままではいられんよ」





「……恋人がいるの?」






「いたら、どうするん?」





「奪うまでだ」





「強欲やな」





「奪われる方が悪い
資本主義の考え方と一緒」





「恋人やないよ」






「じゃあ、なに?仕事上の取り引き?」




「上司や、事務所の」





「上司?歳上?」




「そうそう、7つ上やな」





「歳上好きだったもんね、昔から」






「そいつだけやで」





「本当に?しこさん、嘘つくからなあ」





「紫子のときは、嘘つかへんで」






「何回寝たの?」







「…………なんで、そないなこと聞くん?もう、ええやろ、終わったことやし」






「どうして寝たの?」







「どうしてやと?知りたいのかいな?」






「やっぱり、やめよう」



「怒った?」





「怒らないわけないでしょ、ねえ」




「ごめんな………」




「謝られたら、もっと惨めだ」




練無がゆっくりと瞬きをする
彼は内なる何かと戦っているようだ



「また、その男と寝るの?」





「キミが寝るなって言うんなら、寝ないで」




「なにそれ?僕が寝ろって言ったら誰とでも、寝るわけ?」





「そうやなあ、キミのオススメとあらば、話を聞くぐらいはするなあ」





「はあ、ごめん」


練無が脱いだブレザーからネクタイを取り出す




「今夜は優しくできそうにない………」




「えっ………ちょっと!」



紫子の両手首を頭上に持ち上げて
ネクタイでキツめに縛った





「えっ…………うち、こういうの、嫌いなん…………」



「だから、スーツ着たんだよね
ネクタイが必要でしょ?」




「えっ?れんちゃん…………なにする気なん?」






「…………黙って抱かれろ」





「えっ?」




普段の練無からは想像のつかない
低い声が部屋に響く






練無は紫子のへそにキスをすると
彼女の胸に手をかけた