「ああ、今は相良だから、そう呼んでくれ」
「そう、じゃあ相良くん」
「はいはい」
「なんで、男装なんてしてるの?」
「はあっ、小鳥遊くんには言われたくないな」
相良はおどけたような表情で両手を顔の前でふる
それが何を意味するジェスチャーなのか練無にはわからなかった
「…………関西弁はどうしたの?」
「別に話せるぞ
ただ、相良 葉 のときは標準語の方が
いろいろと便利なんだ」
「…………僕は、しこさんに会いたいんだけど………」
「今は、仕事中だから、勘弁してくれ」
「仕事?」
「ああ、小鳥遊くんに聞きたいことがあったんだ」
「仕事………ね………」
「どうしたんだ、小鳥遊くん?」
「たぶん、僕たちが別れた原因は
お互いの気持ちの問題だったんだろなあ」
「おい、いきなり、何の話をしているんだ」
意を決したように練無は深呼吸をした
「相良くん」
「なんだ?」
「僕に話が聞きたいんだよね?」
「そうだけど……」
「じゃあ、今夜、8時に
シティホテルのロビーで会おう」
「…………なぜ、ホテルで?」
「僕は、しこさんに会いたいんだ………
意味わかるよね?」
「…………小鳥遊くん………」
「僕、その呼び方、嫌いだな」
練無は1人席を立ち
トレーを洗浄器の方へ持っていくと
そのまま、レストランを後にした
相良はしばらく、練無の発言を考えると
なんだかいてもたっても居られなくなり
残りのランチを流すように口に運んだ