相良 葉はn市の大学病院に来ていた

相良にとってこの場所は実に3年ぶりで建物こそ変わっていないが
内装はある程度新しくなっているようだ


大きな電子案内板で
大学病院内の地図をさっと見ると受付に向かった

「すみません」



受付には白のブラウスにタイトスカートの20代後半の若い女性がパソコンを開いていた





「あっはい」


女性は相良を見て、一瞬驚いた表情を見せ顔を赤らめた





「この病院のカフェテリアって
一階の食堂だけですか?」






「ああ、えっと………」


この日もスーツ姿の相良は
その小綺麗な見た目なせいか、どこか紳士的で大人の雰囲気を持っていた




「一般の方は、一階の食堂をお使いになります」



「病院関係者は?」



「それでしたら、5階の共同フロアに………失礼ですが、どなたでしょうか?」





「ああ、失礼」




相良は胸ポケットからケースを取り出し

名刺を見せた





「メディカル医療センターの堤 と申します
本日は外科医の内藤先生に用がありまして………」




「あ、内藤先生ならきっと3階の教授室にいらっしゃるかと……」




「ご親切にありがとうございます」

相良は軽い会釈をして
その場から立ち去り、エレベーターに向かった


もちろん、相良の出した名刺は偽名である
このように相良は万が一を要して
何枚かの用途に合わせた名刺を持ち歩いていた





相良はエレベーターに乗り込むと
5階のボタンを押した