昼休み。七月の半ばということもあり、校舎の外は強い日差しが照りつけていた。教室から外を眺めるのが眩しいほどである。

「ねーえ、ひかる。」
「なに?。」
「ひかるってさ、工藤くんに気があるの?」
「えっ!?」

 ひかるは驚いて、飲み込もうとしていた麦茶を吐き出しそうになる。ひかるの向かいに座り、お弁当を開いている佳之子の顔を見た。なんともびっくりな発言である。

「私が誠に気がある?! なんじゃそりゃ!」

 昼休みの賑やかな教室に、驚いたひかるの声が響き渡ると、弁当を食べていたクラスメイトが一斉にひかるのほうを向いた。男女関係なく、その驚きと不安の眼差しがひかるへと注がれる。
「な、なんってー。」
驚いて大声を出してしまったひかるは、照れながらもおどけたように笑う。うまい言い訳も見つからず、恥ずかしい限りである。しかしながら、男子も女子も、なんだ冗談かとそれぞれ安心して再びお弁当を食べ始めるのだった。

 ひかるはほっとして、また佳之子の方を見て今度は小さい声で尋ねた。
「それってどういうこと?!」
「だってさ、ひかる。今朝、工藤くんのこと見つめてたでしょ。私だってひかるが誰かに片想いするなんて信じられないけど、あの様子を見たらねえ。」

佳之子はほおずえをつきながら、なんとも楽しそうに、話した。

「なっ!。私が片想いもで生きない冷たい人間みたいに言わないでよー。・・・まあそれはともかく、私が工藤誠に気があるっていうのは、佳之子の勘違いだからね。」
「あら、そうだったの。」

もっとつつかれるかと思っていたひかるは、その言葉に少し驚いた。佳之子のあっさりした性格は、恋に関する話でも同じようだ。付き合いやすい友人だなあとひかるはつくづく思った。