「おす、佳之子。」
「おはよー、ひかる。」
 簡単に交わされる挨拶はいつも通りである。だが佳之子は、いつもよりひかるに元気がないことに気がついた。いや、元気がないというより、何か別のことに気をとられているようだった。

 光は、おとなしくはあるが明るい性格である。気分の上下も少ないため、彼女にとって、非常に付き合いやすい友人だ。
 佳之子としても少し心配になる。

 恋の悩みかしら。でも、ひかるってそんな乙女なかんじじゃなくて、なんとなく男勝りなところがあるというか。恋に悩むところが全く想像できないのよね。
 佳之子は、何があったのだろうと考えるが、それらしい答えはみつからない。
 佳之子がひかると友人になったのは、高校に進学してからのことだ。となると、互いを知り合って3ヶ月ほどになると言える。
 そこまで長い付き合いでないから、まだ知らない部分があるのかもしれないわね・・・。

 佳之子はそう考え、ひかるの後ろ姿をじっと見つめた。