海岸線をはしる電車の窓から朝日が差し込む。早朝に家を出たおかげで、他の乗客はほとんどいない。景色がよく見える席に座って、ぼけっと海を眺めた。

 さっきまではすごく慌ただしくしていたけれど・・・。こうして落ち着いてみると、昨日の出来事が自然と思い出される。

 私の返事を聞いた工藤誠は、
「明日もまた来るね。」 
そう言うとすぐに、帰っていった。

 昨日は、ただ手伝ってほしいとしか、彼から言われていない。だから今日、彼の‘探し物’について詳しい話は聞けるのだと、私は勝手に考えている。


 工藤誠は、随分謎の多い人だと思う。
 まあ、同じクラスにいながらも、彼のことを知ろうとしていない私がわるいのもあるが。

 あのとき彼の表情から、考えていることをほとんど読み取れなかったことは紛れもない事実だ。悲しそうな顔も一瞬だけしか続かなかった。
 あんなことができるなんて、少し普通じゃない。恐怖すら感じる。彼はどんな風に生きてきたんだろう。何かあったのだろうか。

 考えれば考えるほど、謎は深まっていく・・・。