誰もいない放課後の南校舎。

 木造四階建ての古い校舎は、昼間はただの古めかしい、埃っぽい場所だとしか感じない。
 けれど放課後になると、南校舎の空気は一変する。

 廊下に無造作に積み上げられた昔の参考書や教科書、天井から垂れる黄色の白熱電球。パステルカラーのあせたポスター。
 静けさは、昭和の時代から変わることのないこの時代遅れの景色に、趣と優しさを与える。
 そして、夕暮れ。校舎は夕焼けの美しいオレンジ色に染まる・・・。
 放課後になると私は、そんな校舎の最上階の隅へと向かう。一日のなかで一番楽しみな時間だ。