「ほら、ミソラも知ってるでしょう?私がもともと騎士だったって」

「うん。男装してお父さんの事護ってたんだよね?」



最初に聞いたのはいつだったか。
お母さんはよく、寝る前に話してくれる絵本の物語のように2人の馴れ初めを教えてくれた。


騎士としてお父さんを護っていたこと。
お父さんはその昔、いろいろあって心を閉ざしていたこと。

そんなお父さんがお母さんや他の騎士のみんなのおかげで立ち直ったこと。


そして、お母さんが騎士をやめ王妃になったこと。



「レオはね、私に剣を持たせたくなかったのよ。私に守られるのが嫌だって言ってた。それでも、私は護りたいからレオのいう事なんて聞かずにいろいろ無茶をしたわ」

「お父さん、かわいそー」

「ふふっ、そうね。王妃という立場になってからも、私はよく城を抜け出していたし。初めの頃なんてばれていないのをいいことにこっそり騎士の入隊試験にまで飛び入り参加したこともあるのよ」

「ええ!?すごい、お母さん!」

「グレンに、怒られたなぁ」




しみじみとお母さんが呟いた。
グレンって、今でもお父さんの側近として働いているあのきりっとした厳しそうな人だよね。
いつもお父さんの側にいてはなれない人だから、私はあまり話したことないんだけど。

それに、いつも険しい顔をしているから正直怖い。

そんなあの人を、グレン、って呼び捨てにできちゃうお母さんてやっぱりすごいのかも。