舌で飴を転がしながら味を確かめつつ、自分以外の仲間の顔色を伺う。

「パインだ!」 

 まず聖が嬉しそうに声を上げる。

「美味しい♪」

 えへっとひとみが安心したように笑う。

「普通にうまい」

 和己が頷く。
 こうなると、一言もしゃべらない明美に視線が集まるのは必然なわけで。

「………ぅ」

 苦虫を噛み潰したような顔をしながら、明美はその場にしゃがみこむ。
 な、なんなのこの味……この世のものとは思えない、決して口にしてはいけないような物を口に入れた気分になる、これは……。

「明美ちゃん、大丈夫~?」

 心配したひとみが慌ててティッシュを持ってくる。
 目に涙を浮かべながら差し出されたティッシュを奪うように取ると、即そこへ飴を吐き出した。

「…………うう」

「で、で? 面白い味ってなんだったん!?」

 聖が興味しんしんといった顔で覗き込む。

「たっ……例えようのない、味」

 顔を上げた明美は、問いかける聖の幸せそうな顔に苛立ちを覚えながら不貞腐れた顔で答える。

「明美ちゃんが舐めたのは~、果物の王様ドリアンキャンディー! でしたっ」

 ごめんね? といいながらも、ひとみは楽しそうな表情。 

「うげっあの、味がうん○だとウワサされてる……!」

 さすがに聖が苦笑いを浮かべつつあとずさる。和己などは哀れみを込めた目で見ている。

「げほっおえぇ……な、なにか……飲み物……」

 とにかく一刻も早く口のなかに残る味をどうにかしたくて、震える手を伸ばす明美。

「はい、どーぞ!」

 再びひとみが親切に、飲み物の入ったグラスを手渡す。

「ありがと」

 明美は一気にそれを煽り、今度は喉が焼ける感覚に再びむせた。

「なっなんなんだー! この赤くてやたら渋い飲み物は……‼」