ハロウィン・パーティー!?~ゾンバス番外編~

 和己と聖が注意をそらしてくれている間に、まずドラゴンの膝の上に飛んだ。そして、次に大きなお腹を蹴り上げると一気に肩まで飛ぶ。目の前をわずらわしく飛ぶ和己に、迫る明美の存在に気付かない。

 トン!

 ドラゴンの肩を蹴り、その頭の中心に生えている角に向かって飛んだ。
 両手に剣を構え、空高く掲げる。剣先が太陽の光に反射して光り輝いた。
 その眩しさにドラゴンが目を細める。

 そして――。

「はっ……!」

 角に向かって剣を全力で振り下ろした。 
 剣は角を二つに分かち、分かたれた角の片方が大地の上に落ちていく。

「ぐおおおお‼」

 強烈な痛みが襲っているのか、大地を揺れ動かすほどの叫び声。苦しげに足や手を振り回している。
 ドラゴンの上から落ちる明美を聖が背中に拾って、巨体から離れた。それと同時にドラゴンの巨体が大きな地響きと共に倒れる。

「がああぁぁ!」

 断末魔の叫びを上げるとその場から消えた。
 後に残ったのは粘土で作られたドラゴンの人形。角が二つに割れていた。

「やったな! 明美‼」

「よくやった」

 聖の背中に乗る明美に、二人が賞賛の声をかけ、明美は嬉しそうに笑った。

「だけど、本当の戦いはこれからだよ」

 開いたままの魔女の家の扉を睨み付けた。

「あれ~? ドラゴンちゃん、倒しちゃったんだぁ? 強いんだねぇ」

 扉の中から緊張感のない声。その顔は陰って見えないが、グリーンのマントに身を包んだ黒いドレスの端が現われる。
 聖の背から飛び降り、細剣を握り締めた。聖や和己も差し迫る戦闘を前に、それぞれ身構える。

「でも、私に勝てるかなぁ?」

 そういって宝石の埋め込まれた杖を片手に、無垢なる笑顔で姿を現したのは、

「ひとみ……」

 やっぱり、という気持ちも込めて愕然とする明美。自分に一番近い存在だったはずの、女の子。
 全てを思い出したわけではないけれど、彼女は自分にとって大切な人だったはず。
 それなのに、ひとみに剣先を向けなければならないのか?
 明美がえもいわれぬ不安に包まれる。

「あなたは……」

 明美を見て、ひとみがはっとしたような表情をする。
 明美が一呼吸を置いて言葉を発した。

「栗かぼちゃを返してもらいに来た」

「す、素敵ぃぃぃ‼」

「はい……? うわ!」

 魔女は目を輝かせて、黄色い声を上げると明美に飛び掛ってくる。
 ひとみの行動に聖や和己がうろたえている。剣を構えるまでもなく、魔女はその首に抱きついた。

「きゃーカッコいい! 可愛い! 素敵~‼」

 首にひとみを下げながら唖然とする明美、それを見て呆然とする聖、和己。

「栗かぼちゃ? いいよ、返す返すー! だから私も一緒に連れてってぇ‼」