「聖ちゃんも和己くんも着替えた!?」

 普段、明美とひとみが寝室に使っている部屋からひょっこり顔を出した。そこには着替えたもののお互いの格好に目をパチクリしている聖と和己。その二人が着替えたのを満足そうに確認してから、

「お待たせ~!」

「ちょ、ちょっとひとみ……! これ、恥かしいって……」

 着替えを済ませたものの嫌がる明美を、どこにこんな力があるのかと思うぐらいの強さで男子二人の前までぐいぐいと引っ張っていく。

「こんなカッコいやだっ……?」

 いやだってば! といいかけたのを、目の前の聖と和己を見て止まる。

 聖が着ているものはラフな白いシャツ。前ボタンは上から3つほど外して少し見えている胸元からはシルバーアクセサリーが見え隠れしていた。下には黒い皮のパンツを穿いている。一見チャラい系だ。しかし強烈なインパクトを放つのは、その頭。なんと狼の被り物をしている。

「お……狼男?」

 和己のほうは、襟元に蝶ネクタイをした黒のタキシード。その背にはやはりタキシードと同じ黒のつややかなサテンのマントを身に付けていたが、裏地が目の覚めるような鮮やかな深紅。一瞬、怪盗かと思ったけれど口の端から牙が出ているところをみると。

「ば、バンパイア……?」

 聖のほうは被り物をしているせいか、顔から下はセクシーなんだけど……いまいち迫力がない。しかし、和己はスラリとした身長に黒のタキシードがよく似合っていた。
 くやしいけど、どきっとするほとカッコいい。
 ひとみはシンプルな黒のドレスを着て、その上にグリーンのフード付のマントをかぶった、魔法使いの格好をしている。

「宝塚もビックリのいい出来でしょ~」

 ひとみがどうだといわんばかりに、明美に手を広げ、迎え入れる。その表情は力作を前に自慢気に輝いていた。