ハロウィン・パーティー!?~ゾンバス番外編~

「明美を離せ!」

 男の腕の中でぐったり意識のない明美を見て、怒りで毛並みが逆立つ。

「明美になにをした!?」

 聖の怒りに冷静に対応しながら、和己は、明美をそっと横たえる。

「血をわけてもらった」

「血……?」

 和己の正体を知らない聖は、怪訝そうに首を傾げる。

「血をもらう交換条件で、ある契約を交わした」

「契約……?」

 狼の聖が今度は反対側に首を傾げる。

「……俺は和己。ヴァンパイアだ。今日からお前の仲間」

「なっ仲間!?」

 驚きで声がひっくり返った。
 明美がそういったのなら認めざるおえないが、その当の本人は意識を失ったまま目を覚まさない。
 心配になった聖が和己の脇を通り抜け、明美の元へ駆け寄る。

「明美……目を覚まさないけど、大丈夫なんだろうな?」

 目を閉じてぴくりとも動かない明美の無事を確かめるように、長い鼻面を寄せた。

「眠っているだけだ。朝になれば目も覚める」

 いまは和己の言葉を信じて朝を待つしかない。聖は和己の存在を警戒をしつつも、明美が目覚めるのを待った。

 やがて朝が訪れ、朝日がやわらかくあたりを照らし出しだし、鳥たちが喜びの歌を歌う。

「うそついたなこの野郎! 明美、全然目を覚まさないじゃないか!」

 狼のままの聖が和己に食って掛かっていた。
 明美は昨日、和己に血を吸われてからというもの目を覚まさない。

「……落ち着け」

「落ち着いてられるか! お前、朝になったら目ぇ覚ますっていったじゃん」

 明美が心配であまり眠れなかった聖が、我慢できないと苛立ちを抑えずに、彼女の周りを落ち着きなくグルグル回る。
 息はしているが、まぶたを開けることのない明美を見やる。

「だいたい血を吸うのだって何も首筋じゃなくたっていいだろ!? 腕でも、足でもよかったんだろ!?」

「なんだ。妬いてるのか」

 その言葉にかっとなる。

「妬いてなんかねー! 俺は明美とキスだってした‼」

「ほう……?」

 挑発するように、両腕を組みながら和己は片方の眉を持ち上げる。