強い風が、
突風が吹いた。
風力に耐えきれず目を覆った明美は次の瞬間、違う場所へ立っていた。
月のよく見える、切り立った山の上。背後には大きな岩があり、そこに背をもたれるように立たされた。目の前にはシルクハットにマント、その中に黒のタキシードを着ている、明美をさらった男。ほぼ全身が闇に溶けるような黒なのに、マントの裏地だけが深紅で月明かりに映えている。
「か、和己……?」
これまた目の前の人物の顔が、いつも側にいたはずの人物にそっくりだった。
ただ少し違うのは、口元から覗く牙のようなもの。まさしくどこからみてもヴァンパイア。
明美の問い掛けには答えず、彼女の顔を挟むように両手を岩に付け顔を近づけていく。
うわっなんだこいつ!
キス、するつもりか!?
慌てて和己に似た男の胸を押しのけようとするが、びくともしない。
慌てる明美に近づいていく唇。その唇は明美の唇を掠めその下の首筋へと向かっていった。
な、なに!?
明美の白く細い首筋がペロリと舐められ、飛び上がる。
舐められた所が空気に触れ、冷たい。
和己が口を開け、今まさにその細い首筋に牙をつきたてようとしたとき、我慢の限界が訪れた。
「ぎゃーーーー!!」
拒絶。
絶叫。
全身全霊を込めた叫びを耳元で聞いた和己が、顔をしかめて首から離れた。
「うるさい」
わずらわしいといった様子で明美を睨みつけている。
明美のほうは自分がされそうになったことに、心臓バクバクで血圧がどうにかなってしまいそうだった。
「う、うるさいじゃない! なんなのいきなり! こんなことしていいと思って……」
「うるさい。その唇を塞ぐぞ」
突風が吹いた。
風力に耐えきれず目を覆った明美は次の瞬間、違う場所へ立っていた。
月のよく見える、切り立った山の上。背後には大きな岩があり、そこに背をもたれるように立たされた。目の前にはシルクハットにマント、その中に黒のタキシードを着ている、明美をさらった男。ほぼ全身が闇に溶けるような黒なのに、マントの裏地だけが深紅で月明かりに映えている。
「か、和己……?」
これまた目の前の人物の顔が、いつも側にいたはずの人物にそっくりだった。
ただ少し違うのは、口元から覗く牙のようなもの。まさしくどこからみてもヴァンパイア。
明美の問い掛けには答えず、彼女の顔を挟むように両手を岩に付け顔を近づけていく。
うわっなんだこいつ!
キス、するつもりか!?
慌てて和己に似た男の胸を押しのけようとするが、びくともしない。
慌てる明美に近づいていく唇。その唇は明美の唇を掠めその下の首筋へと向かっていった。
な、なに!?
明美の白く細い首筋がペロリと舐められ、飛び上がる。
舐められた所が空気に触れ、冷たい。
和己が口を開け、今まさにその細い首筋に牙をつきたてようとしたとき、我慢の限界が訪れた。
「ぎゃーーーー!!」
拒絶。
絶叫。
全身全霊を込めた叫びを耳元で聞いた和己が、顔をしかめて首から離れた。
「うるさい」
わずらわしいといった様子で明美を睨みつけている。
明美のほうは自分がされそうになったことに、心臓バクバクで血圧がどうにかなってしまいそうだった。
「う、うるさいじゃない! なんなのいきなり! こんなことしていいと思って……」
「うるさい。その唇を塞ぐぞ」



