ハロウィン・パーティー!?~ゾンバス番外編~

 その月を背中に負うようにして、木の上に立つシルエット――。

「グルルル……!」

 真っ先にその存在を捉えた聖が、その影に向かって一際大きい唸り声を発した。
 明美は銀色に輝く月に抱きしめられるようにして木の上に立つ、黒い影に目を凝らす。
 そこにはシルクハット、黒のマントに身を包んだ男。

「気をつけろ!」

 聖が重心を低くし、身構えた。
 バサッ
 翼のようなマントをひるがえし、影が飛ぶ。

「消えた!?」

 フワリと宙に浮いた瞬間、それは消えるように姿を消した。

「明美!」

 聖が鋭く叫ぶ。

「わっ……!」

 闇に紛れ黒い翼が明美に近づく。

「見つけた」

 静かな声と共に明美の体が黒い翼に包まれ、彼女の足が大地から離れる。

「このやろっ……!」

 聖が闇に向かって飛ぶ。
 しかし、聖の脚も牙も空を切るのみ。
 闇に包まれた明美の体が、聖のいる地上からみるみる遠退いていく。

「聖!」

 手を延ばす。
 しかし、もう届かない。

「明美――!」

 聖の悲痛な声がこだましたとき、目の前から明美は消えた――。