ハロウィン・パーティー!?~ゾンバス番外編~

 眠りにつくため、火は弱くして寝転んだ。
 夜の森は静かで、空気がひんやりとしていた。日中は太陽に暖められた大地も、いまは温もりを感じられるほど暖かくはなかった。
 ぶるっ
 明美が寒さに自分を抱きしめる。

「寒い?」

 少し離れたところから、大きな狼に戻り四肢を投げ出して寝転ぶ聖の心配そうな声が響く。気配で頭を上げたのが分かった。

「うん」

「こっちくれば?」

 正直に頷く明美を呼んだ。

「また変なことしようとしたら、ぶっとばすから」

 眠たそうな明美は素直に聖のもとへ行くと、うずくまる聖の首を抱きしめるようにして寝転んだ。
 フサフサと柔らか毛が頬にくすぐったい。けれどすぐに心地よいぬくもりに包まれ、寒さから解放されていく。

 明日は谷まで行けるかな?
 栗かぼちゃ、使われる前に取り返さないと……。

 暖かい聖の体温に包まれ、眠りの中へと入っていく。
 
 このまま無事に朝を迎えると思っていた二人を、遠くから射るような視線が静かに見ていた。

「………?」

 ピクリ。
 不穏な動きを感じた聖が耳を何度か動かし、目を開ける。
 耳に神経を集中させながら頭をもたげると、首に抱きつくように眠る明美を見やった。 
 獣のような耳も勘もない明美は、静かに寝息を立てている。
 じっと暗闇の中を睨みつけるように見据える、聖。  
 夜の空気を切り裂き鳥のようなものが飛ぶ。
 犬歯をむき出して、喉の奥から低い唸り声を発する聖に、さすがの明美も目を覚ました。

「ん……なに?」

「なにかいる」

 警戒心をむき出しにしながら小声で伝える聖に、明美は寝ぼけ眼で起き上がる。
 いつの間にか焚き火の火は消え、あたりは真の暗闇と化していた。

「………?」

 明美には何も見えない。聖は気配を探して耳をそばだてている。
 空に吹く風が、隠れていた月を露わにする。