ハロウィン・パーティー!?~ゾンバス番外編~

 狼男の聖は人型と獣型、自由に変身できるらしかった。
 二人は歩き続けて、やがて夜が訪れる。
 
「ここいらは俺の縄張りだから、明美に害が及ぶことはないぞ。いや、なにかあったとしても、俺が守る! だから安心していいからなっ」

 火を焚いた側で、聖が力説している。
 明美のほうは旅立つ前に、七人の小人たちにもらった干し肉を取り出し、軽く火であぶっていた。
 火の中にジュっと油が滴り、肉の焼けるいい匂いがあたりに漂う。

 ぐーっ
 聖のほうから腹の虫がなる音が聞こえた。

「人型と獣型、どっちでいるときが少食?」

「人型かな……?」

 両腕を組み、うむぅと唸りながら聖が答える。

「じゃ、ご飯の時はそのままの姿で食べて」

「へーい!」

 手を上げて元気よく答えると、肉が焼けるのをまだかまだかと、目を輝かせて待つ。そのさまは、涎をたらさんばかり。動物特有の、欲望に忠実な姿が少し可愛く見えた。

「ずっとこの森に一人で住んでるの?」

 二人で火を囲みながら食事を始め、明美が聞いた。

「ああ。仲間がいるわけでもないし、俺を怖がって人は近寄らないしね」

「寂しくなかった?」

「うーん、最初は寂しかったかもしれない。けど、一人に慣れちゃえばそれが普通なんだよな」

「そっか……」

 こんだけにぎやかな奴でも、一人ぼっちに慣れてしまうんだ。
 それでも、嬉しそうに話す聖はどこか寂しそうだった。

「それに……」

 話を続ける聖に目をやる。

「今日、明美に会えるのを待っていた気がする」

「……はぁ」

 演技がかった言い方に、真面目に話を聞く気になれなくなってくる。

「ささ、そろそろデザートの時間だ! 明美を美味しく頂いちゃおう~」

 すかさず嬉しそうに明美に飛びかかった。
 まさに狼男が美味しそうな獲物を目の前に、舌なめずりをしているよう。

「………」

 自分に覆いかぶさるようにして聖が上から見ている。明美は下から冷めた目で見つめ返した。

「明美……お前を見て運命を感じたんだ」

「………」

 聖は熱い瞳で、明美は冷たい瞳のまま見つめ合う。

「俺、お前のこと、好きだ。というわけで頂きまーす!」

 キスを狙って唇が下りてくる。

「甘い!」

 唇を突き出してくる聖に、強烈なパンチを繰り出した。
 肉をえぐる鈍い音と共に、

「ごふっ…!」

 聖が仰向けにひっくり返った。

「あんたってば本当に成長しないね」

 そうとうの嫌味を込めていってやった。