「ちーっす、お見舞いでーす」

軽い感じにノックもせずに入って来たのは、のどかと莉緒だった。

「大丈夫ー?」

「クーラー発明した人にノーベル賞送りたくなってるくらい元気だよ」

「まだ顔りんごみたいじゃん。熱いし」

「こりゃ応援合戦むりだな。先輩たちには言っとくからよく休んでね。」

「くそぅ…。頑張っておいで」

「うん」

二人の騒がしい足音が遠ざかっていく。

疲労からくる眠気に襲われたとき、再び保健室のドアがあいた。

今度は礼儀正しく、ノックと失礼します付きだ。

足音は控えめに近づいてきて、先生と少し話してからカーテンが揺れた。

「よっす、虚弱体質。」

「虚弱じゃないよ。軟弱なだけ。…もやしをリスペクトした生き方に定評があるの」

「息荒いな。苦しいならちょっとクスッとくる返しをする前によく休んどきなよね。」

八桐は買いたてらしい冷たいペットボトルを頬に当ててくれた。

「フォー・ユー。最悪結果発表くらいは出てこいよ」

「うん、どうもありがとう」

八桐は駆け足でグランドに戻っていく。

もらったスポーツドリンクを飲んでから、布団をかぶり直す。

眠気と頭痛が酷い。

そんなときに、また人が入ってくる気配がした。

「来客の多い患者だね」

保健室の先生が呆れて、またカーテンが開かれた。

「……葉月じゃないか」