雪仁にとっては単なる世間話だろう。

しかし俺としてはそうもいかない。

あの軟弱めと下唇を噛んだ。

「んーでも本当に時間ないね。あとで食べよう。行こうか葉月」

「あ、あぁ」

二人早歩きでグラウンドにでると、もう応援合戦が始まりそうだった。

色ごとのブロックに別れて集まり最後のミーティングといった様子だ。

赤ブロックの応援団を見ると、そこには真綾がいて、目が合うと嬉しそうに手を振ってきた。

こちらもふりかえす。

昨日、放課後に真綾が「応援合戦頑張るからみててね」と言っていた。

真綾はチアの服を着ているから、どうやらメインの八人みたいだ。

楓のクラスの応援席には男子と、根暗そうな女子が数人いるばかりでほとんどみんな応援団なようだ。

顔の向きを戻そうとしたとき、雪仁と救護係りでペアのうちのクラスの女子が、八桐に駆け寄るのが視界に入った。

話は聞こえないが、すぐに八桐が歩き出した。

向かうのは校舎の方だ。

保健室に行くのか?

どうしようかと悩んだのは一瞬だった。

すぐに俺もあとに続いた。