5月30日



応援団に仲間入りした真綾を待つだけの暇な時間。

課題もなにもでていないため、全くやることがない。

窓から中庭を眺めると、スズランテープのポンポンを振りながら踊る真綾がいた。

しばらく眺めていたが飽きて、腕を枕にして顔を沈める。

暇な時間なんて寝るくらいしかやることがない。

風が心地よい。

額を伝った汗のあとが、冷えて涼しい。




夢だなと分かる夢のことを、明晰夢というんだったか。

まさにそれだ。

あいた窓から雪が吹き込んで、かき氷を作る。

それに真綾がブルーハワイの真っ青なシロップをかけて、楓がレモンのシロップをかけた。

中間は緑だ。

どっちを食べるか聞かれてもこまりものだ。

お前ら知らないのか?

そのかき氷のシロップ、味は何色でも一緒なんだぞ。

青色は食欲なくなるって楓が説明して、真綾は見た目からも涼しくなるという。

おい、ちょっと待て楓。

しびれを切らした楓が、かき氷にレモン汁を盛大にぶっかける。

するとかき氷は「瞬く間」にとけてしまって、世界が途切れた。

「……づきを取り戻す」

やけに鮮明な声が聞こえて、まぶたを持ち上げる。

教室には俺しかいなくて、あぁやっぱりただの夢だと安心する。

しかし辺りには夢の中で嗅いだような、レモンとかそういう柑橘の香りがする気がした。

「いや、夢のなかも匂いねーよ…」

多分ただの気のせいだ。