試合時間の終わるほんの数秒前に騎馬がくずれた。

勝ち誇った顔で違うクラスの知らないやつが笑う。

そいつのハチマキを横から来た柊が奪ったとき試合終了のホイッスルがなった。

「ゆっきーナイス!」

山田が息を弾ませながら、騎馬から降りたばかりの柊の頭をなでまわした。

「わっわっ、わ、」

なされるがままの柊に苦笑する。

「おつかれー」

俺たちの騎馬を崩した奴もおりながら声をかけてくる。

「運動苦手な俺とかには、騎馬戦か棒倒しどっちかでなきゃいけないとかつらいわ」

どうやら山田の知り合いだったらしい。

ということは俺が落ちた遠因は山田ってことだな。

「そちらさんは大丈夫?怪我とか、」

「ん、余裕」

「こんにゃろ、悟め!」

賑やかにトラックの外へ移動して、次のタイヤ取りの練習が始まるのを待つ。

女子だけのこの競技は、長ジャージ上下着用が絶対だ。

なんかすごいらしい。

両陣地の中間におかれたタイヤを奪い合って数の多い方が勝ちという単純なルールゆえ、女子の本性が見えてくる。

「うわー、砂ぼこりすげえな」

「なんか…、女の子って感じがしない。」

「ヒデェw」

思わず真綾を探すのをやめて、ふいと視線を背けると、グラウンド端の木陰に楓をみつけた。

「すげぇ、全力でさぼってやがる…」