5月30日



明日で5月も終わりかと汗を拭きながら考えた。

あと一週間で体育祭だ。

応援団の衣装も決まって、振り付けも完璧で、今日の練習はいつもよりずっと早い時間に終わった。

以前の反省をいかして、女子更衣室で着替えてから四階に上がる。

中庭を覗くとまだ他のクラスが応援団の練習をしていた。

聞こえてくる威勢のいい声。

そこでふと思い立って隣の教室を見る。

「……葉月、寝てるのか……?」

窓際の席で机に伏せて眠る葉月がいた。

その体はちっとも動かない。

葉月のまえの席について窓の外を見て、葉月を見た。

一定のリズムでひそかに呼吸の音だけがしている。

手の甲を葉月の額のうえにのせて体温を感じる。

それから短い髪の間に指を這わせた。

葉月は少しだけむずがるように、身動ぎする。

手を止めて、葉月が動かないのを待ってからまた指で髪を鋤いた。