8月とメープルシロップの相性

「………………………」

「………………………」

「なんで、わざわざ二人して同じドアの前にたって無言でいなきゃなんないのさ」

「…このドアが一番エスカレーターにちかいせいじゃないか」

「可愛い彼女を家まで送らなくていいの」

「可愛い彼女の家は遠すぎるせいで恐縮されちゃうんだよ」

「…仲のよろしいことで」

電車で20分。

会話もなくいるには居心地が悪いけれど、かといって話し込むこともない。

一月ぶりに葉月と会話した。

しかし話が続くわけでもない。

互いに相手への気まずさがあって、誤魔化したい何かがある。

「なんか喋って」

「むり、葉月と話すことないし」

「先に喋り出したのそっちじゃん」

「あっちいけって意味だったんだよ」

「なぁるほど察しが悪くてすいませんね」

そうやってなんとか駅までの口喧嘩した。